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【②】「ヒト」と平行進化したサルたち!?~いしかわ動物園で霊長目の進化を追う~

前回の記事より、私たち「ヒト」に近い仲間「霊長目」の進化をたどりながら、その生態を紹介しています。舞台は「いしかわ動物園」(石川県能美市徳山町)。

いしかわ動物園では、4つのエリアで霊長目の動物たちに会うことができます。

①サルたちの森(順路前半)
②南米の森(順路前半)
③チンパンジーの丘(順路後半)
④オランウータンの森(順路後半)

(「サルたちの森」)

前回は①エリアのサルたちを2グループ、紹介しました。

・原猿類:前回紹介した「ワオキツネザル」など
・旧世界ザル(狭鼻猿類):前回紹介した「ブラッザモンキー」など

今回は①②のエリアから、より「ヒト」に近づいたグループ、「新世界ザル(広鼻猿類)」を紹介。

果たして彼らの特徴とは?

「新世界ザル」って?

(『Wikipedia』より)

画像ので囲んだグループが、「新世界ザル(広鼻猿類)」です。
で囲んだのは、「旧世界ザル(狭鼻猿類)」

画像をみると、「旧世界ザル」のほうが、「新世界ザル」より進化が進んでいますよね。私たち「ヒト」も「旧世界ザル」の仲間です。

▼新・旧の呼び方の理由
・新世界ザル(広鼻猿類):広鼻猿類は主に南アメリカに生息しています。アメリカ大陸のことを「新世界」というため、広鼻猿類は「新世界ザル」と呼ばれます。

・旧世界ザル(狭鼻猿類):狭鼻猿類は主にアジア、ヨーロッパ、アフリカに生息しています。この地域のことを「旧世界」というので、狭鼻猿類は「旧世界ザル」と呼びます。

新・旧は場所であって、決して「新しい・古い」という意味で呼ばれているわけではないのです。

いしかわ動物園の「新世界ザル」たち

【新世界ザル】コモンリスザル(霊長目 オマキザル科)

まずは「①サルたちの森」で出会える「コモンリスザル」を紹介。

彼らは「オマキザル科」という分類です。

コモンリスザルは、オマキザル科の中では最も小さいサルで、とても機敏に動きまわることができます。

動画:https://www.youtube.com/shorts/xTtTXAnVEcg

また、知能が非常に高く、好奇心旺盛。樹上性(樹の上で生活すること)に適応していて、主に果実や昆虫などを探して食べています。

(エサを探している…?)

飼育員の小田桐さんによると、いしかわ動物園では全部で16頭のリスザルを飼育しています。

展示場に出ているのは14頭。もう2頭は人工哺育で育てられた個体で、人に馴れているものの展示場に出ることはないそう。ただし、「裏側探検ツアー」などのイベントの際には会うことができますよ♪

彼らの聴覚嗅覚による、仲間同士のコミュニケーションはとても発達しています。特徴的な高い音声を頻繁に発したり、尿で臭いづけをしたりします。

新世界ザルの進化

新世界ザルは、旧世界ザルとは独立して進化しました。でも両者には、社会構造や習性などに共通点が見られます。

これは「平行進化」によるもの。

たとえば音声でのコミュニケーションに加え、コモンリスザルのようなオマキザル科のサルは道具を使用することができます。私たちヒトのような旧世界ザルとの共通点ですね。

そのほかにも多くの平行進化の例が、旧世界ザルと新世界ザルの間では見られます。

コモンリスザルのかわいい瞬間!

俊敏に動き回っていたコモンリスザル。動きがだんだんゆっくりしてきたかと思うと…

寝てしまいました!
やや難しい顔をしていますが、とてもかわいいですね。

腕のオレンジ色の毛が美しいです。

【新世界ザル】ワタボウシタマリン(霊長目 オマキザル科)

続いて紹介する「新世界ザル」は、①サルたちの森から少し進んだところにある「②南米の森」で生活しています。

「郷土の水辺」というエリアを通り抜けると、高温多湿な熱帯雨林を再現した「南米の森」が現れます。南米アマゾン川流域の生き物を中心に展示したエリアです。

中央の大きなケージの中にいるのは…

体長25cmくらいのかわいいサル。
名前を「ワタボウシタマリン」といいます。コモンリスザルと同じ、「オマキザル科」に属しています。

その名のとおり、「綿帽子」をかぶったような、白くて長い冠毛が特徴のサル。

コモンリスザルよりは小規模の、家族単位の群れで樹上生活し、小鳥のような甲高い鳴き声で仲間とのコミュニケーションをとっています。

また、彼らはなわばり意識が強く、自分の体から出た分泌物を木に擦り付けて、他の群れを牽制(けんせい)する習性があります。これも「新世界ザル」の特徴であるにおいによるコミュニケーションの一つですね。

そして、タマリンの仲間は、生息域が重複することもしばしば。そんなときは採食する樹の高さ(樹層)を変えることで、お互いに競合することを避けるという社会性を持っています。

ワタボウシタマリンは絶滅の危機にある

飼育員の那須田さんによると、この2頭、「ワイン」と「アンナ」のペアは繁殖が期待されています。

ワインは以前、別のメス「ピンナ」との繁殖を目指していましたが、相性が合わなかったため、2019年頃にペアを組みなおすことにしたそうです。

実は野生のワタボウシタマリンの生息数は非常に少なく、1000匹以下とみられています。彼らは世界で最も絶滅の危機に瀕している霊長目の一種。

メスのアンナは優しい性格で好奇心旺盛、オスのワインは臆病でおとなしく、少し小柄。2頭の間にケンカはなく、少しずつ距離を縮めているようです。

希少なサル、ワタボウシタマリンの繁殖が無事に成功するといいですね♪

新世界ザルは独自であり平行な進化を遂げた

今回は私たち「旧世界ザル」と分岐し、独自の進化を遂げた「新世界ザル」を紹介しました。

彼らの独自の特徴としてはほかに、頬袋がないことや、尻だこを持たないことがあります。また、色覚にも特徴があります。新世界ザルのメスは、2もしくは3色覚を持っているのに対して、オスは必ず2色覚しか持っていません。

つまりメスのほうが多くの色を認識できます。
全く異なる色覚をもつ個体が同じ群れの中に共存している、というのは不思議ですよね。

そのような独自性を持ちながら、私たちヒトと近いコミュニケーション方法や社会性を「平行進化」によって培ってきた新世界ザル。

決して失ってはならない存在だと思います。

次回は「~いしかわ動物園で霊長目の進化を追う~」編の最終回!

「ヒト」に最も近い霊長目、「類人猿」を紹介します。お楽しみに!

文章・画像/名月子店(めいげつこてん)

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