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安佐動物園のゾウ3頭は全員貴重!アフリカゾウのオスの現状と、マルミミゾウの繁殖、かつて日本にいたマルミミゾウを紹介。

前回の記事では、2属3種のゾウ(亜種含めると6種)の細かな違いについて解説しました。

今回は、その中でアフリカゾウマルミミゾウを展示している「安佐動物公園」(広島県広島市)のゾウを紹介します。

貴重なアフリカゾウのオスとその現状、マルミミゾウ2頭の繁殖に向けた取り組みに注目です。

国内3頭のうちの1頭、アフリカゾウのオス「タカ」

(奥が「タカ」)

2023年9月現在、日本国内にいるアフリカゾウのオスは3頭。そのうちの一頭が「タカ」です。

タカは1991年5月29日、姫路セントラルパークで生まれました。国内で生まれて無事に育ったアフリカゾウはたった5頭。そのうちの1頭で、最年長なのがタカです(※)。
※盛岡市動物公園の「マオ」、とべ動物園の「媛」「砥愛」、多摩動物公園の「砥夢」がほかの4頭。

タカのお父さん「宙(ヒロ)」は2020年5月24日に38歳で亡くなってしまったのですが、飼育下のオスのアフリカゾウでは国内最高齢・最大級のアフリカゾウだったんですよ。

タカのお母さんは、「海(ワタ)」という名前です。

『全国動物園水族館ガイド』(1992)には、生まれたばかりのタカの貴重な写真が掲載されていました。

タカは2005年3月10日に安佐動物公園へとやってきました。

安佐動物公園では飼育員さんとたくさんコミュニケーションをとりながら、立派なオスゾウへと成長しました。

幼いころ、ふるさとの姫路セントラルパークでよく一緒に遊んでいた「アイ」と、2011年から繁殖を目指して同居していましたが、アイは2021年7月に亡くなってしまいました。

アフリカゾウに限らず、ゾウの繁殖はとても難しいです。東京ズーネット公式サイト(https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&inst=ueno&link_num=26356)には、その理由として

①発情の見極めが難しいから
②ペアで飼育している動物園が少ないから
③ゾウを移動することが難しいから

という理由が挙げられています。

動物園で繁殖を目指す個体は、オスとメスの相性が悪ければ動物園間で移動を伴う新しいペアの形成が必要となります。ゾウの場合はこれが容易ではありません。

ゾウを輸送するコストや、ゾウが輸送箱に入る訓練、1頭のみ飼育している園の場合は園から人気動物がいなくなるというリスク、様々なことを考えなければいけません。

そして国内のオスは3頭のみ。オスが少ない理由は、メスに比べて気性が荒いため飼育しにくいことが挙げられます。

また現在はワシントン条約により、野生下で捕獲されたアフリカゾウを動物園へ移送することがほぼ全面的に禁止されています。バブル期にはアフリカゾウが盛んに輸入されていました(密猟も横行していた時期だと言えます)が、のちに規制が厳しくなり、現在はアフリカからのゾウの移動はほぼ途絶えてしまいました。

これまで日本国内でお父さんになったアフリカゾウはたった3頭。多摩動物公園にいた「タマオ」(タマオは前述のアイとの間に2頭の子どもを授かりました)、とべ動物園にいた「アフ」、そしてタカのお父さん「ヒロ」です。

(タカの大きい耳。アフリカゾウの特徴!)

日本国内のマルミミゾウは2頭だけ

2023年9月現在、日本国内にいるマルミミゾウは2頭のみ。その2頭とも、安佐動物公園で飼育されています。メスは「メイ」、オスは「ダイ」といいます。

マルミミゾウの「メイ」

(下に向かって真っすぐ生える牙はマルミミゾウの特徴!)

メイは、アフリカ大陸西部に位置する国ブルキナファソの保護施設で推定1999年頃に生まれました。ブルキナファソは、アフリカゾウ(マルミミゾウ)の生息地の北限と言われています。

(木の枝を振りまわすメイ)

メイは2001年に2歳で来日し、はるばる安佐動物公園へやってきました。

メイについてはマルミミゾウとしての(?)重要なエピソードがあります。

(来園当時のメイ)

なんと、メイは「サバンナゾウ(アフリカゾウ)」だと思われていた(※)のです。その証拠に、来園当初は前述したアフリカゾウのタカとの繁殖が目指されていました。

(タカとメイ。今も仲良しです(複雑)。)

ところが、タカの体高は約2.9メートル、体重約4トンあるのに対し、メイの体高は約2メートル、体重は約1.2トン。性別を考慮しても、年の近い2頭の成長ぶりがあまりにも違うことから、「本当にサバンナゾウなのか?」と園内で疑問の声が上がりました。

そこで、ゾウの系統分類の研究をしている統計数理研究所(東京)の長谷川特命教授らがDNA調査を実施。そこで、メイがマルミミゾウであることが判明したのです。

当然、タカとの繁殖は断念(その後アフリカゾウのアイが来園したという風につながります)。

※ちなみに逆のパターンもありました。周南市徳山動物園で暮らしていたゾウ「マリ」はマルミミゾウだと思われてきましたが、2009年に実はアフリカゾウだと判明(http://www.shikoku-np.co.jp/national/life_topic/20090902000194)。

(真ん丸な耳は背中で重なります。)

マルミミゾウの「ダイ」

(片っぽだけ長い牙。)

ダイは、メイと同じブルキナファソで推定2001年ごろに生まれました。

2002年5月13日に来日し、山口県にある秋吉台自然動物公園サファリランドで約20年間過ごしました。そして2022年6月2日、ブリーディングローンによって、メイの“唯一のお婿さん”として安佐動物公園へやってきました。

秋吉台サファリランドでは毎日、来園者からエサをもらったり、鼻でふれあいをしたりして過ごしたダイは、とても人懐っこい性格です。飼育員さんとのトレーニングも長年行っていて、指示を聞いて鼻を上げたり、伏せたりできるので、健康チェックに役立ちます。

安佐動物公園はダイの来園前にマルミミゾウ舎の増築・整備を行っていて、ダイを受け入れる準備を万全にしていました。

日本国内のみならず世界的にも大変注目される、マルミミゾウの繁殖に向けた取り組みが、安佐動物公園で始まりました。

筆者は水浴びをするダイを目撃。ゾウがこんなにリラックス?している姿を初めて見ました。

鼻で水を吸い込んで、口に運んだり体にかけたりしています。

座っておしりに水をかけてもらっています。

牙に鼻をだらーんと乗せているのは、リラックスしている証拠です。

マルミミゾウの繫殖に向けた取り組み

2017年、安佐動物公園のホームページ(http://www.asazoo.jp/event/news/want/3039.php)には「希少なマルミミゾウのメイ(雌)。新たに雄を導入して繁殖を目指す計画です。」という文言が掲載されました。

長い間別々の園で暮らしてきた唯一のマルミミゾウたち。以前からメイとダイが同じ園で見られることを、多くの人が期待していました。その希望が公式に動き出した瞬間です。

(メイ)

2022年6月2日、ダイとメイの「出会い」は、ニュースなどで「21年ぶりの運命の再会」と表現されました。2頭はふるさとが同じだからですね。

ダイは2022年7月16日から一般公開されました。そして、重要なメイとの相性は…。メイとの仲が悪ければ、日本のマルミミゾウ繁殖の夢はその瞬間に頓挫してしまいます。

でも一安心、ダイとメイの相性は良好でした。

(柵越しにコミュニケーションを取り合うダイとメイ)

2頭を別々のエリアで飼育して相性を観察してきたところ、柵越しにお互いを受け入れるような様子が見られ始めたうえ「メイ」の血液などの検査結果から発情期が近いことが推測されました。

この機を見逃すわけにはいきません。2023年5月2日から、断続的な同居が始まりました。
そして、2023年6月1日、2頭の交尾が確認!

2頭の交尾が確認されたことはニュースで大々的に報じられました。飼育下でマルミミゾウの交尾が確認されたのは、アフリカの動物園での記録があるのみで、世界的にも珍しいことだったからです。

その後、2頭の同居は6月中旬まで続けられました。今後は研究機関が検査を行い、「メイ」が妊娠している可能性があるか詳しく調べるそうです。

ゾウの発情期は年に3回。それぞれ数日しかないうえに外見の兆候を示さないため、見極めは困難です。メイとダイが同居して交尾まで至ったのは、飼育員さんの日々の観察のたまものですね。

筆者が来園した8月中旬も、ダイとメイのコミュニケーションは長い時間行われていました。同居を解消しても、お互いのことは気になるようです。

メイはひとしきりダイと会話すると、スッとアフリカゾウのタカの方へ…(なぜだ…)。ダイが名残惜しそうに見つめる中、思わせぶり?な行動をとるメイちゃんでした。

2頭がこれからも仲良く過ごせるように願うとともに、待望の赤ちゃんの誕生にも期待したいと思います。

かつて日本にいたマルミミゾウ

現在は日本に2頭しかいないマルミミゾウですが、かつては北海道や沖縄でも飼育されていました。

旭山動物園の「ナナ」

そのうちの一頭は、旭山動物園にいた「ナナ」。1980年10月17日に、推定3歳でアメリカから来園しました。ナナもメイと同じように、アフリカゾウだと思われていたゾウです。

なおこのとき、同じく北海道にあるおびひろ動物園にも「ナナ」(アジアゾウ)が、釧路市動物園にも「ナナ」(アフリカゾウ)がいました。1980年~2006年は北海道の3園で「ナナ」というゾウ3種がいた時代なんです。これってすごいことですよね。

マルミミゾウのナナは、2006年4月21日に亡くなりました。亡くなる数日前まで食欲旺盛な姿を見せてくれたようです。 アフリカの森林で暮らすマルミミゾウは、雪には弱い動物。  ナナが立てなくなってしまった時は、雪が降る前に職員総出で寝室に運びました。

旭山動物園で26年物時を過ごしたナナ。公式サイトには、ナナの健康のために飼育員さんが様々な工夫を施していたことが残っています。

▼参考ページ
・旭山動物園公式サイト
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/2200/p008780.html

・『旭山動物園だより(2006年4月27日)』
マルミミゾウ「ナナ」の突然の出来事
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/2200/p0087999928_d/fil/dayori105.pdf

・『旭山動物園だより(2006年5月10日)』
マルミミゾウ「ナナ」の26年間の思い出
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/2200/p0087999928_d/fil/dayori106.pdf

沖縄こどもの国の「ベベ」

もう一頭は、沖縄こどもの国にいたオスのマルミミゾウ「ベベ」

1983年3月に推定9歳で来園。3~4歳頃のべべは背中に飼育員さんを乗せたり、テレビ番組に出演したりしてとても人気者になりましたが、6歳ごろから気難しくなったそうです。

15歳頃からはゾウのオス特有の「ムスト」が見られ、凶暴になったべべはゾウ舎を壊してしまったのだとか。

(べべがいた運動場)

べべは2001年4月25日に亡くなりました。死亡当時、推定30歳。

亡くなる2日前までは何の異常もなく元気でしたが、小屋で倒れてしまったことが原因だったようです。

沖縄こどもの国のお土産屋さんでは、べべの鼻や、足の原寸大のぬいぐるみを販売していました。

実は、旭山動物園のナナと沖縄こどもの国のべべは繁殖を目指す取り組みがされていました。しかし、日本の端と端にいた2頭…移動のことを考えると繁殖はかないませんでした。
これから、マルミミゾウが日本の各地で見られるようになることは難しいかもしれませんが、かつていた個体の存在を知ったり思い出したりすることも、マルミミゾウを理解することにつながります。

▼参考ページ
・『動物園へ行こう(沖縄こどもの国 飼育係 編)』
・ゾウさん訪問日記←べべの写真がたくさん載っています。
http://www.paopaoland.com/domestic/visit/okinawa/okinawa.html
・がんばれ!沖縄こどもの国
http://okinawaweb.com/kodomonokuni/animal/elephant/elephant.html

文章・画像/名月子店(めいげつこてん)

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