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【埼玉県こども動物自然公園】キリンは2mの高さから産み落とされる。そして30分で立ち上がる。【赤ちゃん「アップ」】

今回は、2023年3月15日に「埼玉県こども動物自然公園」(埼玉県東松山市)で生まれたキリンの赤ちゃん「アップ」くんと、その家族を紹介します!

皆さんにも「今」、埼玉こども動物自然公園に行ってほしい。その理由をお話します。

▼この記事の内容
①埼玉県こども動物自然公園のキリン家系図
②「アップ」くんの今日まで
③キリンたちへの疑問
④キリンの誕生にまつわる話
⑤「今」埼玉こども動物自然公園に行く理由

(園内マップ)

キリンたちは、入園してすぐの「キリンテラス」と、その奥の放飼場にいます。

(放飼場)
(小屋が2か所。雨や日差しをしのぎながら、キリンを観察できます。)

 

埼玉県こども動物自然公園のキリン家系図

2023年5月現在、埼玉県こども動物自然公園では7頭のキリンが生活しています。大人3頭と、子ども4頭。
それでは、「アップ」くんの個性あふれる家族たちを紹介します!

お父さん「マル」

カメラに興味津々のこちらのキリンさん。
アップくんのお父さん「マル」です。

2015年4月24日に同園で生まれて今年で8歳になるマルは、4頭の子どもたち全員のお父さんです。

※マルはこの日バックヤードにいたため会えませんでした(泣)

お母さん「ステップ」

(左のツノが曲がっているのが特徴)

お母さんは「ステップ」
2015年6月17日に金沢動物園(神奈川県横浜市)で生まれ、もうすぐ8歳になります。マルと同い年ですね。

ステップは生まれてまだ1年半の2016年11月28日、埼玉県こども動物自然公園へやってきました。

ステップのお母さん「ミルク」(2004年12月4日埼玉県こども動物自然公園生まれ)は、「ブリーディングローン(繁殖を目的とした動物の貸し借り)」で金沢動物園に来園。そこで生まれたステップの所有権は埼玉こども動物自然公園にあったため、まだ幼くはありましたが埼玉に「帰ってきた」という経緯があります。

その後ステップは2回の出産を経て、ミルクのように立派なお母さんキリンになりました。今はアップくんをいつも気にかけ、優しくお世話しています。

お兄ちゃん「レン」

アップくんのお兄ちゃんは「レン」
ステップの最初の出産である2021年7月8日に生まれました。もうすぐ2歳になるレンは、だんだんお母さんから離れて一頭でいる時間も増えてきました。

キリンは群れで生活する動物。メスと子どもは基本一緒にいますが、オスはぽつんと一頭でいることもあります。

最年長ママと異母兄弟たち

こちらは同園で最年長のキリンのメス、「リン」(2003年7月1日生まれ)です。

キリンは舌を器用に使い、葉を歯で(ダジャレ?)しごき取って食べます。
リンはこれまで4回の出産を経験した、ステップの大先輩。風格があり、近づくだけでも圧倒されてしまいます。

(「届かないよ~」)

リンの子どもは2頭、同園で暮らしています。
懸命に首と舌を伸ばしてお母さんと同じ草を食べようとしているのは、2022年8月13日に生まれた「マリスケ」くん。

「アップ」くんとは一番年の近い、異母兄弟です。

(そしてこの顔である。)

1本だけ、草を確保できたようです(笑)マリスケくん、草が頭に落ちてるよ!

そして、こちらもリンの子ども。マリスケのお兄ちゃん「ルン」くんです。2020年6月15日生まれで、もうすぐ3歳になります。ルンくんは、網目模様に亀裂が入っていることが特徴。

身長はほとんど大人と同じくらいに見えました。

オスのキリンは4~5歳で大人になります。そのサインとして、ルンのように額の真ん中のツノが伸び、顔がゴツゴツしてきます。そして体色も濃くなります。

ルンがお父さんのマルと首をぶつけ合っています。
これは「ネッキング」という力比べ。ルンはもうすぐ、マルのように立派なオスになっていくのですね。

2023年3月15日生まれ!末っ子「アップ」

そして、2023年3月15日生まれの末っ子「アップ」くん!生まれてまだ2か月。
目がパッチリしていてとても可愛い!

なんだかいい匂いがしそうです(?)。
キリンってなんともいえない切なそうな表情をしていますよね。アップくんは守りたくなる可愛さです。

(喜怒哀楽?)

 

埼玉こども動物自然公園のキリンたち

♀リン    2003年7月1日生まれ 20歳
♂マル    2015年4月24日生まれ 8歳
♀ステップ  2015年6月17日生まれ 8歳
♂ルン    2020年6月15日生まれ 3歳
♂レン    2021年7月8日生まれ  2歳
♂マリスケ  2022年8月13日生まれ 1歳
♂アップ   2023年3月15日生まれ 0歳
※2023年5月時点

「アップ」くんの今日まで

2023年3月15日 誕生

2023年3月15日に誕生したアップくん。同園では42頭目のキリンの赤ちゃんです。

(立派な首!首の後ろには、骨を引っ張り上げる組織があります。)

 

2023年4月21日 公開

4月21日から、公開が始まりました。
アップくんは公開前から好奇心旺盛な性格で動き回っていたそう。

2023年5月5日 名前発表

(園内掲示)

こどもの日の5月5日、ついに名前が発表!
4月21日から4月30までの間に、3591票の投票があったそうです。

▼名前の候補と得票数
アップ:1145票
マツマル:788票
ペッパー:594票
ビリス:575票
ヌー:489票

「アップ」が圧勝ですね。お母さんのステップとあわせて「ステップアップ」
名前の候補を見ると、飼育員さんが赤ちゃんにこめた思いを想像できて感慨深いです。

2023年5月9日 屋外放飼場デビュー

5月9日、広々とした屋外放飼場にデビューしました。

(草を食べ終わってボーっとするアップくん)

今では放飼場の隅から隅まで楽しむアップくんのようすを見ることができますよ。

キリンたちへの疑問

(園内掲示)

埼玉こども動物自然公園のキリンたちを半日くらい観察していて、抱いた疑問を解き明かしてみました。

なぜ子どものツノはふさふさしているの?

(アップくん)

赤ちゃんキリンのツノには、大人よりも黒い毛がふっさふさに生えています。それはなぜでしょうか?

おそらくそれは、頭を守るためだと思います。

生まれたてのキリンのツノは柔らかく、内側に倒れています。
しかも頭骨に固定されていないため、不安定な状態。

体毛の役割は、外からの刺激から体を守ることですよね。つまり毛が生えている部分は「守る必要がある部分」ということです。生まれるときにツノを守る、生まれてからは不安定なツノと頭を守る、という役割があの黒い毛にはあるのではないでしょうか。

(※イメージ)

ちなみにキリンのツノは頭骨から伸びたものではなく、皮膚の中に独自につくられる「皮骨」(「オシコーン」ともいう)というものです。生まれて一週間ほどでツノは垂直に立ち、成長とともに頭骨と一体化していきます。

なぜ大きいのに急に走れるの?

アップくんとマリスケくんが急に走り出しました!

キリンは時速50~60kmで走ることができます。
赤ちゃんとはいえ、キリンは生まれたばかりでも100kg近くあるので、相当な機動力が必要ですよね。

急に走ることができる理由は、キリンの「足」の構造にあります。

では問題です。皆さんはキリンの「ひざ」や「かかと」はどこにあると思いますか?

(どの哺乳類も関節は同じ方向に曲がります。)

正解は、ここ!

びっくりですよね。キリンは「足の裏」がとても長いんです。

キリンは常にかかとをあげて、爪を立てた状態。大きな筋肉がつく太ももが短く、筋肉が少なくて軽い足の裏が長くなっているため、すばやく足を動かすのに有利な形をしているんです。

また、彼らの指は中指と薬指の2本だけ。指の本数を減らすことは、足の先端を軽くすることに役立ちます。先端が軽い棒のほうが、より小さな力でよりすばやく動かすことができますよね。

※奥でマリスケくんが「反芻」をしています。

さらに、彼らの「歩き方」にも注目。キリンは、左後・左前→右後・右前というように、前足、後足を左右同じ側で動かす「側対歩」と呼ばれる方法で歩きます。側対歩は前に進むときに常に身体が水平になるので、少ない揺れで歩くことができ、エネルギーの消費も少なくて済みます。

キリンは身体は大きく、でも速く走ることができるように進化した動物なのです。

(2頭はなぜかきれいに別々の方向へ…)

 

網目模様は何のためにある?

(園内掲示)

キリンにはさまざまな種類がありますが、どの種にも網目のような模様が見られます。

すべての現象には理由があるはず。キリンの網目模様は一体何のためにあるのでしょう?

(多摩動物公園観察シート「キリンのからだ」より https://www.tokyo-zoo.net/guided/giraffe_K.pdf

これは、キリンの敵であるライオンやヒョウの視界
彼らは色がよく見えないといわれています。

サバンナの木のそばでこうしてキリンがじっと立っていると、ライオンやヒョウにとってはキリンが何頭いるか、ましてやキリンがいるのかどうかすらわかりにくいのです。確かに網目模様って木漏れ日みたいですね。

私たち人間は、キリンを「模様」と「色」で特徴づけますよね。でもほかの動物にとっては「模様」が重要なのです。人にとっては目立つと思われがちなキリンですが、実はカモフラージュの達人だったというわけです。

キリンの誕生にまつわる話

キリンの赤ちゃんは世界一背の高い赤ちゃん!

生まれたばかりのキリンの赤ちゃんは、頭までの高さが180cm~200cm
世界でもっとも背の高い赤ちゃんだといわれています。

(「岐阜新聞Web」より https://www.gifu-np.co.jp/articles/gallery/2406

キリンの妊娠期間は哺乳類の中でも長く、約460日
赤ちゃんは約15か月間かけて、お母さんの胎内で十分に成長します。

なぜ十分に成長してから生まれる必要があるかというと、背が低いとお母さんのお乳を飲めないからです。お母さんキリンは立ったまま出産し、お乳をあげるときも立っています。赤ちゃんがお母さんのお乳に届く高さまで成長しておく必要があるのです。

先ほどキリンの足は速く走ることに特化していると書きました。100kgもの赤ちゃんを細い足で支え続けることは、お母さんキリンにとってとてつもない負担になると思います。それでも我が子を生かすために、十分にお腹にとどめておくのです。

(お乳を飲み終わったアップはステップの下をくぐり抜けました。)

また、動物園では出産日を事前に予測して、それに備えています。その方法としては、交尾の日を記録しておいて計算すること、出産経験のあるキリンの場合は過去の妊娠期間を参考に計算することなどが挙げられます。

寒い地域の動物園では、冬に赤ちゃんが産まれると寒さで成長が悪くなるので、暖かい時期に産まれるように交尾の時期を調整している所も。

キリンは立ったまま出産するので、赤ちゃんは落下するように生まれてきます。その高さは2mほど。人間なら、2mの高さから生まれるなんて考えられませんよね。

さらに特殊なのは、生まれてくるときの姿勢。首を折り曲げて、頭とおしりがくっつくかたちになっています。足が地面に着くくらいの瞬間に産み落とされるのです。そのとき、首にかかる体重を最小限にし、おしりがクッションの役割をします。

そしてキリンは、生後3か月以内での死亡率が50%以上。つまり、早く成長しないと生きていけません

産み落とされた赤ちゃんはその瞬間に敵に襲われても逃げられるように、一刻も早く立とうともがき始め、通常30分以内には立ち上がります。本当にたくましいですよね。

(たくましく育つルンとレン)

サバンナではライオンやハイエナたちが、キリンの出産を見張っています。赤ちゃんはすさまじい「緊張感」とともに生まれてくるのですね。

(左からステップ、ルン、アップ、マリスケ)

キリンの成長のようすはこんな感じ。

・0歳:約180cm
・1歳:約250cm
・2歳:約340cm
・3歳:約370cm

身長は4歳くらいまでは年10%前後成長し、その後も8歳くらいまでは、年数%なだらかに成長していきます。

埼玉こども動物自然公園には0歳~3歳のキリンが一頭ずつと、8歳のキリンが2頭います。キリンの成長過程と、成長が終わった姿、どちらも観察することができますよ♪

それが今、埼玉こども動物自然公園に行ってほしい理由です。

(左からステップ、ルン。ルンはまだまだ大きくなります。)

 

キリンでカモフラージュするキリン(?)

こちらはステップ&アップ親子。

リン&マルスケ親子。

彼らの敵であるライオンやヒョウからは…

こう見えています!遠目で見てみてください。子どもの存在が分かりにくくないですか?
こうして親子が一緒にいることで、子どもを隠すことができるんです。まさにカモフラージュの達人!

(アップ「隠れてますよ。」)

アップがばっちりステップに「隠れて」いる!
ちなみにキリンは親子間で模様が似るといわれているため、子どもはより親に隠れやすいですね。

(どれが親子かな?)

 

「今」埼玉こども動物自然公園に行く理由

(草を「一本だけ」乗せて歩くアップくん)

キリンはまだまだ謎に包まれた動物。

皆さんも、キリンたち一頭一頭がどんな人生を歩んできたか知ったうえで、埼玉こども動物自然公園に行ってみてください。その唯一無二の見た目や生態は、実際に観察してみるとより「スゴさ」が分かります。

埼玉こども動物自然公園では、今ならキリンの「親子愛」「成長過程」を間近で観察できます。キリンの一生を理解するために、おすすめの動物園ですよ♪

(マリスケくんに追いかけ回されるアップくん。2頭の鬼ごっこも必見です!)

 

文章・画像/名月子店(めいげつこてん)

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