連日猛暑が続いていますね。
動物園の動物は、暑いときどんな風に過ごしているのでしょうか?
彼らの生息地の気候や生態なども紹介しながら、お伝えします。
今回の舞台は「愛媛県立とべ動物園」(愛媛県伊予郡砥部町)。
この記事では前編として、カピバラ、ライオン、カバのようすをお届けします。
カピバラ
まずはカピバラ。
2018年の情報では、とべ動物園にはオス4頭、メス3頭の計7頭のカピバラが暮らしているとのこと。
朝のようす。池に全身浸かってゴロゴロ。水中で一回転してました。
基本的には午前中にメスのカピバラを、午後からはオスのカピバラを運動場に出しているようです。性別で展示時間を分けている動物って珍しい気がしたのですが、おそらくカピバラはネズミの仲間なだけに繁殖力が強いことが理由だと思います。増えすぎないように性別で展示時間を分けているんですね。
カピバラのオス・メスは見分けづらいですが、鼻の上に注目!メスの鼻の上には毛が生えていますが、オスは毛が薄く臭腺が発達しています。臭腺部分の突起(「モリージョ」といいます)は分泌物でテカテカになっていることも!
動物園や水族館ではおなじみの存在であるカピバラですが、野生個体はどこに生息しているか知っていますか?
答えは「アマゾン川流域」(南アメリカ)を中心とした、温暖な水辺。年中高温(平均気温は23~28℃)で、雨季と乾季のある熱帯気候です。
カピバラは野生でも、暑くて水の多い環境で暮らしていたのですね。
野生のカピバラは、昼間は水中で休み、午後遅くから夕方にかけて、採食を行います。夜間は休息と採食を交互に行います。筆者がカピバラ舎を訪れたのは午前10時頃だったので、彼らも野生個体と同じく水中でゴロゴロしていたのですね。夜のカピバラの姿も気になる…!
また、カピバラの体毛はタワシのような手触りで、硬く長いもの。体を震わせるだけで水を落とすことができます。雨季でも過ごしやすいようにできているんですね。
カピバラは泳ぎも得意で、敵から身を隠すために、5分以上もの潜水ができるんですよ。鼻先だけを水上に出して眠ることもあります。
暑さを水中で上手にしのぐ、カピバラたちでした。
ライオン
続いてはライオン!
とべ動物園のライオン舎では、屋内で涼みながらライオンに接近することができます。
筆者の目の前で、ちょうどいい高さの岩に頭を乗せて寝ているのは…
日本で一番「毛量」が多いライオンと名高い、ネオ!
ライオンのオスはたてがみの量と色の濃さで強さが決まるので、ネオはまさに最強のライオンと言えます。
常に前から風を受けているような、生え方のクセもかっこいいです。
ライオンは、暑さにあまり強くありません。高温下では活動力が低下する傾向があります。
そのため一日のうち20時間ほどを寝そべって過ごします。日中にも行動することはありますが、最も活動的になるのは、たいてい夕暮れよりあと。
ネオも夜に活動するために、日中はゆっくり体を休めています。
ネオが一瞬、目を覚ましました!目が合うと迫力が倍増します。
2014年5月11日に大分県のアフリカンサファリで生まれたネオは、2019年5月、姫路セントラルパークからとべ動物園にやってきました。
この中のどれか一頭がネオだと思われます。
小さいころはこんなにあどけない姿だったネオ。数年後、立派すぎるたてがみを携えて、来園者から「ネオ様」と呼ばれることになろうとは…。
ネオ様!
野生でも最強のライオンになれそうなくらい立派です。
ネオにとって暑さは体にこたえると思いますが、ライオン舎には常に日陰があるので、少し安心です。
ライオンの「クレイ」
とべ動物園には、平日11:30~13:00、土日祝日は12:00~13:30の間だけ展示されているライオンがいます。
それは「クレイ」!2022年5月5日生まれの男の子です。
クレイは生後一週間頃まで、お母さんの「さくら」から献身的な子育てを受けていました。しかしさくらが体調を崩してしまったため、飼育員さんの苦渋の決断によって人工哺育に切り替えられました。
とべ動物園公式ホームページ(https://www.tobezoo.com/tobetopics/2022/06/026335.html)の、「さくらから預かった大切な命を精一杯守ってあげたいと思います。」という飼育員さんからの言葉が印象的です。
クレイは人に懐くのが早かったらしく、飼育員さんたちの愛情をたくさん受けて、今日までたくましく育ちました。
そしてクレイは毛量の王、ネオの息子!これから立派なオスライオンになっていくことでしょう。
2023年7月中旬のクレイ。少し首周りの毛が伸びてきています。
オスのたてがみは、1歳頃からホルモンの作用により生え始め、3歳頃に生えそろいます。
割と長めな枝をゲット。
その後はずっと枝で遊んでいました。この日は少し雲と風があり涼しかったので、クレイも活発に動いていました。
クレイはこの場所がお気に入り。よく隣のキリンやシマウマを観察しています。この表情がなんとも可愛いですね。
カバ
こちらはカバの「ミミ」さんです。
ミミさんは筆者が見ていた時間ずっと水の中にいました。
これは乾燥に弱いカバが暑さ対策としてとっている行動。温度変化の少ない水中でほとんど動かずに、エネルギー消費を抑えています。
先日、4頭目の子どもであるまんぷく君を東武動物公園に送り出し、子育てを終えたミミさん。
筆者が前回とべ動物園を訪れた時にはまんぷく君もいたので、少し寂しい気持ちになりました。
ミミさんは先日37歳になりました。
4頭の子どもたちは全国の動物園で活躍しています。安心してゆったりと過ごしてほしいと思います。
こちらはミミさんと長年一緒に暮らしている、オスの「ハグラー」さん。
以前別の記事で、「ハグラーはアメリカから来園する際、輸送中に横浜の検疫所を脱走し、河川に3日間滞在したという武勇伝を持っています。」と紹介しました。
両目の上にあるケガの痕は、3日間河川を泳ぎ回り、陸に上がっているところを捕獲された際にできた擦り傷なのだそう。
ハグラーさんは「日本の河川を泳いだ唯一のカバ」なのです。
ごっそりと盛られた草を食べ続けるハグラーさん。じっと観察しているとあまり口の中に入っていませんでした(笑)一気に食べているように見えて、実は少しずつゆっくり食べているんですね。
カバは体重と食事量の比率が、ほかの植物食の動物と比べると低いです。
▼1日当たりの採食量の比較
・ゾウ(体重約4000kg):1日あたり約200kg
→体重と食事量の比率は20:1
・カバ(体重約1500kg):1日あたり約50kg
→体重と食事量の比率は30:1
カバは普段から省エネ生活をしているので、暑さも効率よく乗り越えていけるのかもしれませんね。
動物自身も暑さ対策をしている!
動物園の動物は健康管理の一環で、最低限の暑さ対策がとられています。
ですが、ほとんどの動物には冷房を使用したりはしません。日陰を作ったり、冷たいエサを与えたりすることで、あくまでも自然の姿に近づけたまま、動物が暑さを乗り越えられるように手助けしています。
今回紹介したカピバラやカバは水中で、ライオンは日陰で、自ら考えて暑さ対策をとっていました。
次回は後編として、とべ動物園のサイ、アフリカゾウ、レッサーパンダのようすについてお届けします!
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文章・画像/名月子店(めいげつこてん)