サンシャイン水族館(東京都豊島区)ではさまざまなイベントが開催されますが、筆者は2023年6月、「アオリイカ」の公開給餌を目撃しました。
公開給餌が行われたのは、本館1階の「海の忍者」コーナー。通年イカの仲間が展示されているエリアです。
海の忍者コーナーには3つの水槽があり、2023年6月時点では4種のイカ(アオリイカ、コブシメ、シリヤケイカ、コウイカ)を展示し、それぞれの特徴を観察することができました。
※2023月9月2日時点では、アオリイカ、コブシメ、バンダコウイカの3種を展示しています。
アオリイカはどうやってエサを食べるの?
参考:サンシャイン水族館 STAFF ブログ
https://ameblo.jp/sab-aqua/entry-11449527974.html
アオリイカは主にエビ類や小魚を食べます。
飼育員さんが水槽の上から小魚をスッと差し入れると、イカたちが近寄ってきます。
そのようすを動画で撮影しました。
すぐエサに食いつくわけではなく、近づいたり離れたりを繰り返して一気に仕留めていますね。
イカのハンティングを観察し、以下のような手順で行われていることがわかりました。
①「触腕」で捕まえる
イカの足(腕)は全部で10本。その中でも特に長い1対の足(腕)のことを「触腕」といいます。
触腕は伸縮自在で、餌を捕獲するための特殊な足(腕)。
エサを見つけるとまずは触腕で力強く引き寄せます。
②10本の足(腕)で抱え込む
エサを捕まえた後は、10本の足(腕)全体で抱え込みます。
そしてエサをまっすぐ食べられるように、足(腕)と同じ方向に持ち替えます。
③いらない部分を切り離して食べる
硬い頭部を切り離してから食べます。イカは、細身でやわらかな「イワシ形」の魚が好みのようです。
イカのエサの捕らえ方には、イカの「こだわり」を感じますよね。きちんと手順を踏んでいるような感じがします。
エサを瞬時に識別し、あっという間に捕食!
それが「海の忍者」たる所以かもしれません。
アオリイカの「目」はすごい!
参考文献:三重大学 2007 修士論文 イカの視覚に関する基礎的研究(牧野朗彦氏)
海の中でエサを瞬時に識別できるアオリイカは、とても視力が良いのではないでしょうか。
三重大学の研究によると、イカの視力はこのようなデータが出ています。
・アオリイカ:0.63(0.89または0.69などとする説も)
・ミミイカ:0.32
・スルメイカ:0.64
・スジイカ:0.90
・ソデイカ:1.37
私たち人間の大人の裸眼視力は、平均0.5。
アオリイカはヒトと同じくらい、もしくはそれ以上の視力を持っているんですね。
加えて片目の視野は180度。盲点がなく、ヒトよりも広い範囲を見ることができます。
アオリイカの目は色を白黒でしか認識できないといわれていますが、物を立体的に感知することは可能です。
優れた視力と視野、そして空間認識能力で、アオリイカは忍者のようなハンティングをしていたのですね。
コブシメの「イルミネーション」
参考:「オーシャナ」今更聞けないコブシメの話 ~ダイビングガイド曾我勲さん
https://oceana.ne.jp/column/61631#:~:text=%E5%A8%81%E5%9A%87%E3%81%A8%E5%90%8C%E3%81%98%E3%81%8F%E3%80%81%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%81%8C,%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A0%E3%81%A8%E3%81%8B%E3%80%82
アオリイカと同じ水槽にいたのは、大型のコウイカの仲間「コブシメ」です。
アオリイカがエサを食べている間、コブシメはエサに見向きもせず、体色をイルミネーションのように変化させていました。(※2023年6月時点)
コブシメの体細胞には、テレビのようにあらかじめ色素が羅列されていて、目で相手や状況を判断して体色を変化させています。
異性がいた場合はアピールの可能性がありますが、この日は筆者に向かって体色を変化させていたため、おそらく威嚇だと思われます。
海の忍者をじっくり観察しよう
アオリイカの水槽には卵が産みつけられていました。(2023年6月当時)初夏から秋にかけて、赤ちゃんが生まれてきます。
※現在は卵の展示はありません。
イカたちは基本的に、繁殖を終えると寿命がきてしまいます。
短い命を精一杯まっとうするため、イカたちの行動は忍者のように速いのかもしれません。
イカは私たちにとってなじみのある生き物ですが、じっくり観察するとその奇抜な形や、多彩な技に気づくことができます。
皆さんも究極の海の忍者、イカに会いに、サンシャイン水族館を訪れてみてくださいね!
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文章・画像/名月子店(めいげつこてん)