動物園・水族館で行われる「屠体(とたい)給餌」という取り組みを聞いたことがありますか?一般的に、動物園の生き物は園が用意した野菜・果物・牧草など、その動物が自然界で食べているものに近いエサを食べて生活しています。屠体給餌は、主に猛獣に向けてのエサやりです。自然の中で他の草食動物の肉を食べるライオンやトラの姿を見て、お客さんに命について知ってもらうことが目的です。
屠体給餌の仕組み
屠体給餌は、屠畜(家畜などを食肉などにするため狩ること)をした動物を、そのまま骨や川がついたままの状態でライオンやトラなどに与える給餌方法です。ライオンやトラの自然に近い採食の姿を、来場客に見てもらいます。そして、獣害問題や動物のいのちについて考えてもらうことも狙いです。
田畑をあらすシカやイノシシを捕らえ、専門の加工業者が食肉加工・殺菌処理などを行ったうえで動物園へと運びます。猛獣たちが駆除された動物を食べて、動物園生活でのストレス解消や栄養補給にもなるうえに、捕獲動物の肉の廃棄減少につなげられるので一石二鳥です。
環境エンリッチメントの考えも、屠体給餌の目的の一つです。動物福祉の観点より、飼育動物の幸福な生活を実現するための方法として、屠体給餌が取り入れられています。
屠体給餌を行ったことのある動物園(一例)
下記の動物園では、屠体給餌の公開を行ったことがあります。今後、再び実施するかもしれません。もしくは、こちらに記載のない動物園・水族館でも実施する可能性もあります。
・豊橋総合動植物公園のんほいパーク(愛知県)
・男鹿水族館GAO(秋田県)
・羽村市動物公園(東京都)
・盛岡市動物公園(岩手県)
・千葉市動物公園(千葉県)
・天王寺動物園(大阪府)
・大牟田市動物園(福岡県)
関心があれば、園の情報をチェックしてみてください。
屠体給餌を見学していのちの大切さを知ろう
屠体給餌は、ライオンやトラなどがリアルな形の獣の肉をそのまま食べるので、特に子どもたちから見たら衝撃的な光景かもしれません。しかし、「いのちに感謝しつつ食事を食べる」という意味を知るための大切な取り組みです。動物たちの野生本来の姿を垣間見える、貴重な機会でもあります。それと同時に、山間部などで起こっている鳥害・獣害の問題についても考えされられます。
機会があれば、動物園で屠体給餌を見学してさまざまな問題について考えてみましょう。
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文章・画像/光丘月乃