水族館や動物園で飼育されている生きものたちは、人と同じように毎日元気でずっと健康、というわけではありません。
体調が悪ければお休みをして、薬が必要になることもあります。
そういった裏での健康管理があってこそ、私たちは生きものの姿を見て、楽しむことができるのです。
しかし、ここで一つ疑問が浮かびました。
動物園にいる陸の動物たちは、直接触れて体調を判断できるし、その様子をテレビなどで見たことがある。けれど、水の中を自由に泳ぐ魚たちの健康状態はどのように判断するのでしょうか。
そこで筆者は、板橋区立 熱帯環境植物館(ねったいかん)を訪問。飼育担当の方にお話を聞いてみることにしました。
触れられないからこそよく「観る」
「水の中の生きものは触れるだけでも大変だし、触れても体温とかはわかりにくいかなと思います。どうやって健康状態を把握するのでしょうか?」
さっそく質問を投げかけてみました。
飼育員さんの答えは、シンプルながらも非常に重要なものでした。
その答えは「観察」すること。
普段泳いでいる様子はもちろん、エサを食べるときの動きや食べる量、昨日との体の違いなど細かいところまでよく観察することが重要なのだそうです。
細かく観察して初期症状を見逃さない
魚の病気で代表的なものに「白点病」というものがあり、これは寄生虫などが原因で、魚の体が文字通り白い点で覆われてしまうもの。
放っておくと抵抗力が落ちてほかの病気を併発することもあります。
そのため早めの処置が重要となり、細かい観察が必要になります。
たとえば食欲が落ちている、寄生虫を追い払おうと体をこすりつけるなど、普段と異なる動きを見せたら要注意。
こういったいつもと違う様子を見つけると、飼育員さんたちはすぐに対策を考え、講じます。
具体的な対策は?
ねったいかんでは基本的に、自然治癒で治るものであれば経過を観察していきます。
そして、治療が必要と判断した場合は裏の予備水槽に移し、症状に合わせて治療します。
力及ばず死亡した場合は、原因を究明するために魚などの生態や病気に詳しい獣医さんと連携して解剖などを行うこともあるそうです。
まとめ
魚などの生きものたちは、時として人間よりも繊細です。
しかし、言葉を話せるわけではありません。
だからこそ飼育員さんはよく観察することを徹底し、わずかな兆候も見逃さないようにしています。
私たちが毎日見ている生きものたちの元気な姿。それは見えない裏の努力があってこそ。
そんなプロフェッショナルたちへの感謝を忘れずに、これからもたくさんの生きものたちを観察してみませんか?
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文章・画像/政喜