皆さんは、日本にたった一頭しかいない動物がいることを知っていますか?
その動物は、「フォッサ」といいます。
名前だけ聞いて、どんな姿なのか想像してみてください。
これがフォッサ!
どの動物とも違う、不思議な姿ですよね。不思議だけど、とってもかわいくて、毛並みがツヤツヤな動物です。
今回は謎に包まれた動物「フォッサ」について、詳しく紹介していきます!
上野動物園のフォッサ「ベザ」くん
参考:東京ズーネット公式サイト(https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=14003)
日本で一頭しかいないフォッサがいる場所は、「上野動物園」(東京都台東区)。
上野動物園のフォッサは、名前を「ベザ」といいます。
2006年生まれの男の子。
ベザくんは2010年1月16日、メスの「アンバー」ちゃんと一緒に、南アフリカ共和国の飼育施設から来園しました。
2010年2月13日、フォッサ日本初公開!
「不思議な動物」「謎の生き物」「猫のような犬のような動物」と、初めて見るフォッサに来園者は興味津々でした。
ベザとアンバーは繁殖が期待されていましたが、2017年5月19日、アンバーが骨の腫瘍で亡くなってしまいます。
それから今日まで6年間、ベザはたった一頭で暮らしています。
フォッサを見てこんな疑問が
フォッサを間近で観察して、こんな疑問が生まれました。
①フォッサって一体何者なの?何の仲間なの?
②何を食べるの?どんな生活するの?
③なぜ特徴的な見た目なの?
④なぜ日本に一頭しかいないの?
一つずつ調べてみたいと思います。
①フォッサって一体何者なの?何の仲間なの?
参考:Wikipedia
フォッサの生物学的分類は、「哺乳綱食肉目マダガスカルマングース科フォッサ属」。「フォッサ属」にはフォッサだけが属しています。
フォッサはネコのようにもイヌのようにも見えますが、「ネコ科」でも「イヌ科」でもなく「マダガスカルマングース科」なのです!
つまり分類的には、マングースやミーアキャットに近いということになります。見た目はあまり似ていませんね。
マダガスカルマングース科の動物は、「マダガスカル島」の固有種。独自の進化を遂げ、マングースだけでなく、ネコやジャコウネコなどに似た形態も持っています。このように別の分類の生き物が、似た環境の影響により同じような形へと進化する事を「収斂進化(しゅうれんしんか)」といいます。
そして、マダガスカルマングース科最大の種は、我らがフォッサなんです!フォッサはマダガスカル最大の肉食獣で、食物連鎖の頂点に位置しています。
②何を食べるの?どんな生活するの?
参考:Wikipedia
フォッサは肉食獣。
キツネザル類(その種のほとんどがマダガスカルに分布)や、げっ歯類・テンレック類などの哺乳類、鳥類、爬虫類、カエル、昆虫などを食べます。
獲物を前肢で捕らえ、後頭部や喉に噛みついて仕留めます。ネコ科やイヌ科などの大型肉食獣と同じですね。
また、キツネザル類などの大型の獲物は、2頭で協力して捕らえることもあるようです。
フォッサの体長は約80cm、尾長約90㎝。キツネザルの体長は約45cm、尾長約60cm。フォッサにとっては大きな獲物ですね。
上野動物園では鹿肉などを与えているようです。
舌で肉をこそぎ取る食べ方は、ライオンやトラなどと似ています。フォッサの舌もザラザラしているんですね。
またエサだけでなく、生活形態も幅広いです。フォッサは主に樹上で生活しますが、地表でも活動します。休む時は木の股などにいますが、洞窟で休むことも。
そして、夜行性ですが、昼間に活動することもあります。
いつどこで姿を現すかわからないフォッサは、獲物にとっては厄介な存在です。
上野動物園ではベザくんがすぐにエサを食べ終わらないように、飼育員さんが樹の上などさまざまな場所にお肉を設置しています。
③なぜ特徴的な見た目なの?
フォッサの第一印象は、ほかのどの動物とも重ならない、特徴的な見た目であること!
特に筆者が注目したのは、目・足(爪)・歯です。
まず、フォッサは目がとても大きいですよね!目が合うと結構怖いです。
フォッサの目はマングースの仲間の中でも大型。顔の正面に位置していることも特徴です。
ネコ科のライオンやジャガーを思わせるこの大きな目は、木の上からでも獲物を瞬時に見つけることに役立ちます。
また、耳介が丸い点も、ネコ科の大型動物と似ています。
そして、鼻の形はイヌに似ていますよね。鼻孔が大きいことがその理由かもしれません。吻 (ふん) が細長いのも、イヌに似ています。
次に、足。
フォッサの足裏にはほぼ体毛がなく、弾力のあるゴムのような肉球が見えます。
この肉球を使って、垂直に立った木も登ります。ジャンプ力も相当なもので、2mくらいは軽く飛び跳ねることができるんですよ。
こちらの動画では、目にもとまらぬ速さで樹の上を駆け抜けるフォッサの様子を見ることができます。
筆者は、フォッサの足の裏は、サルやアライグマ、コアラと似ているな、と思いました。
フォッサは歩き方も特徴的で、足の裏をかかとまでつけて移動する「蹠行性(しょこうせい)」という方法で歩きます。
蹠行性のメリットは、直立したときの安定性が高いこと。つまりフォッサは、「よく立つ動物」ということになります。食物連鎖の頂点に立っているフォッサは、あたりを警戒する必要はあまりないように思います。どうして立つことが多いのでしょうか…?
ほかの蹠行性の動物は、霊長類、クマ、ウサギ、コアラなどがいます。足の裏の特徴は、歩き方と共通しているんですね。
ベザくんの鋭い爪。
フォッサは多くのネコ科動物のように、爪を自由に出し入れすることができます(爪をおさめる「さや」はないそうですが…)。
指の間には水かきがあるので、泳ぎも得意なのかも?
少し見えにくいですが、フォッサは犬歯も特徴的。
マングースの仲間の中で、犬歯が目立つのはフォッサだけ。
そして、肉や骨をはさみのように切断する機能をもつ「裂肉歯」も発達しています(イヌとネコでは上顎第4前臼歯と下顎第1後臼歯がそれに相当します)。
フォッサは体より尻尾が長い!
樹の上でバランスをとるのに役立ちます。
…結局、ほぼ全身が特徴的でした。
フォッサがこのような特徴的な見た目になったのは、「収斂進化」のたまもの。マダガスカルという、固有種ばかりの島で進化したこと、たくさんの種類の獲物に対応したことなどが理由ではないでしょうか。
④なぜ日本に一頭しかいないの?
2010年にベザくんとアンバーちゃんが日本にやってきて以降、日本の動物園にフォッサが来園したことはありません。
それにはさまざまな理由があると思いますが、そもそもフォッサがとても貴重な動物であるということが挙げられると思います。
フォッサの生息数は、森林伐採や農地開発による生息地の破壊、狩猟、害獣としての駆除などによって減少しており、1977年に「ワシントン条約附属書II」に掲載されている絶滅危惧種です。
フォッサはマダガスカルに広く分布していますが、見かけることは非常にまれで、現地でも希少な動物として認識されています。
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストによると、フォッサの総個体数(野生)は成体で2635~8626頭ほど。現状では飼育個体ではなく、野生個体を増やす環境を整えることが急務なのかもしれません。
また日本唯一のフォッサ、ベザくんは17歳と高齢なので、たとえ新しいメスがやってきたとしても、子孫を残すのは難しいかもしれません。
ベザくんは長年つがいとして一緒に生きてきたアンバーちゃんを失ってからも、たくましく生きてきました。そんなベザくんのために私たちができることは何でしょうか。
※海外のフォッサの赤ちゃん(チェスター動物園)
フォッサのために私たちができること
日本で暮らす私たちにできることは、フォッサという動物を知ること、フォッサの故郷について知ること、ベザくんに会いに行くこと、少しでもベザくんが過ごしやすいように配慮することだと思います。
筆者はベザくんに会いに行くためだけに、上野動物園に行く価値があると思いますよ!
遠い故郷からやってきて日本で暮らしているベザくんは、年齢を知らなければとても高齢とは思えないくらい元気いっぱいです!
ベザくんを目の前のしてみると、皆さんもきっと何か感じるはず。
フォッサが展示されている「アイアイのすむ森(レムールの森)」には、アイアイやキツネザルの仲間たちをはじめ、マダガスカル島に生息する小型哺乳類や鳥類・爬虫類なども展示されています。
遠く離れたマダガスカル島の独自の生態系を間近に感じることができるのは、上野動物園だけ。
ベザくんが最後まで上野を好きでいてくれるように、皆さんもできることを考えてみましょう。
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文章・画像/名月子店(めいげつこてん)