連日猛暑が続いていますね。
動物園の動物は暑いときどんな風に過ごしているのでしょうか?
彼らの生息地の気候や生態なども紹介しながら、お伝えします。
今回の舞台は「愛媛県立とべ動物園」(愛媛県伊予郡砥部町)。
この記事では後編として、クロサイ、アフリカゾウ、レッサーパンダのようすをお届けします。
参考:とべ動物園公式サイト、Wikipedia
クロサイ
サイ舎の中にクロサイがいました。
この子はメスの「クー」。サイのこんなかわいいポーズ、初めて見ました。が、やや夏バテのようすです。
クーは2000年9月26日に、金沢動物園(横浜市)で生まれました。とべ動物園には2005年1月6日、なんと27時間もかけてやってきました。
今年で23歳になるクーちゃんは、これまでにオスの「ストーム」(2002年安佐動物公園生まれ)との間に2頭の子どもを出産し、育てたお母さん。
1頭目の子ども「ライ」は、2011年に生まれ、2016年に天王寺動物園へ旅立ちました。2頭目の子ども「フー」は、2019年に誕生し、現在は日立市かみね動物園で生活しています。
クーは「フー」を出産した際、片足を後ろに伸ばして乳房を下げる行動をしたり、気づかう仕草を見せたりしたことから、とても優しい性格であることがわかります。
現在子育てがひと段落ついたクーは、落ち着いた日々を送っています。
野生のクロサイの生息地は、アフリカ大陸の南あたり。アンゴラ、ケニア、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、タンザニア、ジンバブエなどに自然分布しています。
南アフリカは南半球のため、季節が日本とは逆。現在の日本の夏はかなり暑いですが、南アフリカは年間を通して高温になることも、寒すぎることもなく過ごしやすい気候です。
南アフリカの快適な時期は、ちょうど8月~10月あたり。そのため日本にいるクロサイは、野生個体とは逆の環境で生活しているわけです。加えて夏は日本の方が暑いので、クーちゃんがこんな格好になってしまうのも納得です。
でもクロサイは、暑さをしのぐ術を持っています。彼らは「薄明薄暮性」。日中は木陰などで休んで過ごします。また、水浴びも好きで、乾季には砂浴びも行います。
クーはサツマイモやカシの葉が大好きだそう。たくさん食べて、日本の厳しい夏を乗り越えてほしいです。
こちらは運動場にいたストームさん。砂浴びの後でしょうか?角に砂やら草やらが乗っかっています。
突起がたくさんある壁に角をこすりつけたり、頭を振ったりして砂を落としていました。
アフリカゾウ
お尻を向けて並んでいるのは…アフリカゾウ!
とべ動物園には現在3頭のアフリカゾウが暮らしています。
3頭は家族で、母が「リカ」(37歳)、娘が「媛(ひめ)」(16歳)、媛の妹が「砥愛(とあ)」(10歳)。
ゾウは大きく分けてアジアゾウ、アフリカゾウ、マルミミゾウの3種に分けられるといわれています。その中でもアフリカゾウの「家族」に会えるのは、国内でとべ動物園だけなんですよ!
リカは3頭の中で牙が一番長いです。優しい顔のお母さん。園内で開催されたイベント「アニマル総選挙2018」の「肝っ玉母さん部門」で、2245票を獲得し優勝した、正真正銘の最強ママです(2位はトラのウミ:2100票、3位は園長の田村千明さん:1907票←!?)
媛は、国内で初めて人工哺育に成功したアフリカゾウです。なんとも言えないアンニュイな表情が特徴。
砥愛は、国内で飼育されている最年少のアフリカゾウです。
リカの子どもはもう一頭、オスの「砥夢(とむ)」がいます。現在は愛媛から遠く離れた多摩動物公園で生活中。砥夢は人間が大好きで、飼育員さんにかまってアピールをすることもしばしば。
媛、砥愛、砥夢は、愛媛の「媛」、砥部(とべ)の「砥」の文字が入っている愛媛県自慢のアフリカゾウなんです!
リカ、媛、砥愛の3頭は一緒に行動することも多いです。先程お尻を向けていたのは、室内から出てくる水を飲んでいたから。
この小窓から、飼育員さんがホースで水をあげているようです。ゾウもサイと同じく水が大好きなので、とても喜んでいました。
小窓が閉まっても、砥愛はしばらくおねだりをしていました。
運動場の別の場所からもお水が!嬉しそうな砥愛。
ゾウは鼻を器用に使って水を飲みます。
鼻から水を吸い上げ、鼻孔の中に貯めます。一度に吸い上げる水の量は10リットル(バケツ1杯分)!
そして貯まった水を口に運んで飲みます。1日に飲む水の量は100リットル以上。私たちヒトは1日に約2.5リットルの水を摂取しますから、約40倍もゾウのほうが多いことになります。
ゾウは火照った体を冷やしたり、皮膚の乾燥を防ぐために水浴びをします。そして、体が濡れてしまうと体がかゆくなるので、砂浴びをします。
砂浴びには紫外線や寄生虫から身を守る効果もあります。水浴びと砂浴びの繰り返しによって、ゾウは暑さから身を守っています。
国内唯一のアフリカゾウの家族、リカ一家。
3頭は仲良く協力しながら生活しています。娘2頭の成長と、それを見守るお母さんのようすをぜひ見に行ってみてください。
偉大な父「アフ」
媛、砥夢、砥愛の父親は「アフ」といいます。妻のリカとセットで…「アフリカ」夫婦!
アフとリカはとべ動物園が開園した1988年に、2歳で南アフリカ共和国の「ゾウ孤児院」から一緒にやってきました。
アフは2016年に推定29歳で亡くなってしまいましたが、5年ほど経って、標本となりとべ動物園に帰ってきました。頭骨標本の高さは1.1メートル!ゾウの魅力を伝えてくれています。
飼育下での繁殖が難しいとされているアフリカゾウ。3頭の父親になったアフリカゾウは、国内ではアフだけです。偉大なアフは今もとべ動物園で生き続けています。
リカ一家に会いに行くときは、ふれあいセンターにいるアフのようすも見に行ってみてくださいね。
レッサーパンダ
最後はとべ動物園のレッサーパンダのようすをお伝えします。飼育されている3頭のうち、「コウメ」と「砥々丸(ととまる)」が屋外に出ていました。
まずは全身の毛色が濃いと話題(?)のコウメちゃん。2014年7月6日に生まれ、八木山動物園(仙台市)から来園しました。
涼しい顔をしているように見えるコウメですが、暑いのか舌を出したままずっと動きませんでした。
こちらは砥々丸。2015年にとべ動物園で生まれました。アフリカゾウの「砥夢」「砥愛」とおそろいの「砥」仲間。
砥々丸は皮膚の病気で耳が欠けてしまいましたが、おまんじゅうみたいに可愛い男の子です。「アニマル総選挙2018」の「超かわいい部門」で、2902票を獲得し見事優勝した経験もあります!(2位はシロクマのピース:2377票、3位はサーバルのティア:1611票)
ところで砥々丸は、さきほど紹介したクロサイのクーと同じ格好をしていますね。暑いときの動物の姿勢は、種を超えて共通しているのでしょうか。
砥々丸はコウメととても仲良しで、赤ちゃんの誕生が期待されています。
レッサーパンダは生息地や外見的な特徴から「シセンレッサーパンダ」と「ネパールレッサーパンダ」の2亜種に分けられます。国内の動物園等で多く飼育されているのはシセンレッサーパンダ。
野生のレッサーパンダの生息地は、ブータン・中国・ミャンマー・インド・ネパールの標高1500~4000mの森林。年間最高気温は25度程度の冷涼な地域です。
とべ動物園のある愛媛県の2023年7月の最高気温は37度に達することもありました。彼らは生息地の気温より10度以上高い環境で日々生活しているんですね。
寒さに適した体のつくりをしているレッサーパンダ。暑いのは苦手です。
でも暑さ対策はバッチリ!とべ動物園のレッサーパンダ舎は冷房完備。生息地の冷涼な気候が冷房によって再現されており、彼らも暑さをしのぐことができます。
また、来園者からフルーツの差し入れがくることもしばしば。レッサーパンダはぶどうやリンゴなどの秋の果実が好きなのかもしれません。
動物と暑さを乗り切ろう
とべ動物園の動物たちが、猛暑の中どのように過ごしているか紹介してきました。
サイは日陰で休んだり水・砂浴びをして、ゾウも水浴び・砂浴び、レッサーパンダは冷房のある小屋で涼んだりフルーツを食べたりして、それぞれ暑さ対策をしていました。
しばらく暑い日が続きますが、皆さんも動物たちを見習って(?)暑さ対策を万全にしましょう!
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文章・画像/名月子店(めいげつこてん)