上野動物園の東園には様々なクマたちがいます。中でも、今の季節がぴったりで、連日たくさんの人たちに囲まれているのが「ホッキョクグマ(シロクマ)」です。
現在はオスの「イコロ」、メスの「デア」が、「ホッキョクグマとアザラシの海」で生活しています。
2頭は昨年12月20日から、繁殖のために同居を始めました。単独生活をする生き物なので、普段は別々で生活していますが、運が良ければ2頭がじゃれあう様子を見ることができますよ。
イタリアからやってきた「女神」デアちゃん
今回はメスのデアちゃんが屋外に出てきてくれたので、紹介します。
デアは2006年にイタリアの動物園で生まれました。「デア」はイタリア語で「女神」という意味です。2012年に上野動物園にやってきました。
この日は人間にとっては肌寒かったですが、デアはプールの中で木の棒をガシガシ。
野生のホッキョクグマの生息地は、カナダやロシアなどの北極圏。
マイナス40度にもなる、厳しい寒さを生き抜くため、その身体はさまざまに進化しました。
小さい耳
耳がほかのクマの仲間に比べて小さく、熱を逃しにくくなっています。
大きな前足
ホッキョクグマの前足は泳ぎや潜水に適していて、運が良ければ、水中トンネルでじょうずな泳ぎを見ることができますよ。
パンチも強力で、主食のアザラシを一撃で気絶させることができるんだとか。
分厚い皮膚
デアの濡れたお顔を見ると、少し地肌の色が見えますね。
ホッキョクグマの地肌は黒色です。
そして体脂肪率は、なんと50%!
その皮膚には脂肪をたくさんたくわえる層があるため、過酷な環境を耐え抜くことができます。
じゃあ、毛の色は?
皆さんはホッキョクグマの毛の色が、何色に見えますか?
別名「シロクマ」といわれるくらいですから、白だと思う人が多いと思います。
ここでホッキョクグマの毛について、驚くべき真実をお伝えします。
毛は「ストロー状」!
ホッキョクグマの毛は、かなり特殊な構造となっています。
中が空洞になっていて、空洞の中の空気があたためられると膨張します。そうして毛と毛が密になり、身体の表温を逃さない構造になっています。
「蓄熱構造」といわれるものですね。
下毛は長さ5cmほどで、きめ細かく密に生えています。その上を、約15cmに達する長く荒い質感の保護毛が覆っています。
毛の色は「透明」!
ホッキョクグマの毛の色はなんと「透明」なんです!
ほどんどの動物の毛は、光を透過しません。それに対し、ホッキョクグマの体毛は光を透過し、ストロー状の毛に反射することによって「散乱光」という光になります。
それが、白く見える理由です。
光を透過するので、日光も直接黒い地肌に届き、体温を上げることができます。
そうした理由で、体温がほとんど外に逃げません。
ホッキョクグマは「輻射(ふくしゃ)」(熱を持った物質が、赤外線を出す現象のこと)の量がとても少ないといわれています。
この特性から、赤外線カメラによる空中撮影の際、ほぼその姿をとらえられないことが知られています。
彼らの姿は、雪の反射光に遮られるためです。
ホッキョクグマの毛はいろんな色に見える!
女神のように美人さんのデアちゃん。
毛が透明なので、いろんな色に見えます。
白、黄色、青、緑、グレー…
ホッキョクグマの毛にこんな秘密があったなんて、驚きですよね。
これからますます寒さが厳しくなっていきますが、たくましく、むじゃきに生活するホッキョクグマたちに、ぜひ会いに行ってみてはいかがでしょうか?
【上野動物園まめちしき】ホッキョクグマの姿が見えないときは?
・ホッキョクグマの運動場は2つあるので、別の運動場にいるかも!
・午前中はどちらか1頭、午後は2頭とも見ることができる!
・健康維持のトレーニングなどで、一時的に公開をお休みしているかも(11:00~12:00のどこか15分)。
・16:30頃になると、寝室に戻ってお休み。
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文章・画像/名月子店(めいげつこてん)