15 C
Tokyo
ホームREPORT【発見】いしかわ動物園は2...

【発見】いしかわ動物園は2周目からが本番!アムールヒョウのコロンが見せてくれた美しき「野生」の姿

「いしかわ動物園」(石川県能美市徳山町)の魅力はたくさんありますが、その一つに「一周すればすべての動物に出会える造り」が挙げられます。

(園内はぐるっと一つの道でつながっています。)

今回は2023年3月中旬、12時頃に入園。レストランでの食事や、お土産を見る時間も含めて、一周約3時間半で回ることができました。

一周回り終えたとき、時刻は15時30分頃。閉園は16時30分(3月31日まで。4月1日からは17時閉園)。

二周目行こう、と思いました。

なぜなら少し心残りがあったからです。

それは、この子の顔を見られなかったこと。
アムールヒョウの「コロン」(メス)です。

一周目はずっと高いところでこうして寝ていました。もしかしたら起きているかも?と思い二周目にチャレンジすると、いいことがありましたよ♪

(二周目にチャレンジした時のコロン)

二周目はお客さんも減り、動物とよく向き合えるのでおすすめです。

コロンちゃんは、まだ一周目と同じ場所にいました。
そしてときどき目を開けたと思えば、また閉じて…。

ですが、次の瞬間…!

(!)

コロンはいきなり目をカッと開いてこちらを見てきました。
餌になる小動物の気持ちがわかった気がします。

そして「シャー!」と威嚇。
この威嚇は筆者への挨拶か、はたまた筆者を「獲物」と定めたか…。

さらに、こちらを見ながら爪とぎを始めました。
完全に筆者を仕留めにかかるつもりだ…!

飼育員の北川さんによると、ネコ科動物は爪とぎをするのが日課。太い木の幹に爪を引っ掛けて、古い爪をはがし、根元にある新しい尖った爪を露出させるのだそう。そうすることでいつでも獲物を捕まえられるように準備しているのです(やっぱり…)。

コロンは爪とぎはもちろん、太い幹に顔や体をこすりつけ、体全体のお手入れも欠かしません。お手入れ中は本当に気持ちよさそうな顔をしているそうです。

(確かに気持ちよさそうな顔かも?)

そしてついにコロンは、筆者を「狩り」に出発しました。

なんと目にも止まらぬ速さで丸太の上を走り、頭上に降り立ったではありませんか!――

アムールヒョウ「コロン」がいしかわに来るまで

ここで少し、コロンの紹介をします。

2014年3月11日。「福山市立動物園」(広島県福山市芦田町)でアムールヒョウの双子が誕生しました。

6月11日、一般公開。SNSで「可愛すぎる!」と話題になり、すぐに園の人気者になりました。

愛称の応募総数は3470点。2頭の名前は「カラン」&「コロン」に決定しました。

ヒョウの模様は生まれた時から変わらないので、模様で個体の識別ができます。本当にそっくりの双子、どちらがコロンでしょうか。

そして、2015年6月24日、1歳になったコロンは両親とカランの元を離れ、いしかわ動物園にやってきました。

★いしかわ動物園初日のコロン
・24日の朝、到着。
・スタッフを恐れることなく「フゥー」と元気に威嚇で挨拶。
好奇心旺盛な性格。スムーズに新しい寝部屋に向かい、全身で飛び跳ねるように寝室をチェック(緊張?好奇心?)
・水を飲んだかと思えば、到着から約3時間後には馬肉を食べだし、夕方までには完食。
・顔つきや体つきはガッシリ。可愛い1歳のメスというより、オスの雰囲気を感じさせ、今後の「ネコたちの谷」の主役にもなりそうな予感。

※コロンの家族については、記事の最後で紹介します

「カラン」と「コロン」、愛称の小話

双子のカランとコロン。2頭のお母さんは「ピン」といいます。

ピンは三つ子で、きょうだいは「ポン」と「ダッシュ」(ピンポンダッシュ!)。そしてその3頭の両親は「ベル」と「チャイム」。なんとみんな音にまつわる名前なんです!

コロンの命名者は「コロコロとして可愛かったので思いついた。みんなに愛されてほしい」と名付けたそうですが、ちょうど「ベル」の音のような愛称ですよね。

アムールヒョウの希少性

さて、コロンの獲物となった筆者ですが、「二周目に来たかいがあった!」と、満を持してシャッターを切っています。

2023年3月中旬。まだ石川県は寒さが残るため、コロンの毛も冬仕様です。

アムールヒョウの毛は、夏毛が2.5cmほどなのに対して、冬毛は約7cm。お腹やしっぽもふさふさなので、ほかのヒョウよりやや大きく見えます。

また、毛の色も変わります。夏は赤っぽい黄色ですが、冬は白っぽい黄色。それは彼らの生息地が関係しています。

アムールヒョウは、ヒョウの仲間では地球上で最も北の、ロシア東南部や中国の東北部の森林などの「寒冷地」に生息する亜種。

冬は雪に紛れられるよう、毛の色が白に近づくのです。

(この「獲物」は逃げないな。じゃあここでじっくり見張るとするか。)

彼らの生息地である「アムール川」流域では、森林伐採や密猟が行われたため、野生での生息数は100頭ほどと非常に少なくなりました。アムールヒョウは、ワシントン条約1類(絶滅間近の状態)に指定されている絶滅危惧種の動物です。

アムールヒョウの絶滅を避けるためには、継続的な保全活動が必要。そのために日本の動物園も、積極的に繁殖活動に取り組んでいます。

メスのコロンは現在、お婿さん待ち。

筆者の真上で、コロンは体のお手入れを始めました。万全のコンディションで仕留めたいのでしょう。

以前いしかわ動物園を訪れた際は、このガラストンネルにはユキヒョウがいました。どうやら日替わりで使っているようです。

ところで、お互いのにおいなどは気にならないのでしょうか。どちらも寒冷地に暮らすヒョウなので、仲間だと思っているのかも。

(逃げるんじゃないわよ。)

2022年11月時点で、日本では10か所の動物園で、17頭のアムールヒョウを飼育しています。

生息地が狭く、個体数も少ないアムールヒョウは、野生・飼育問わず必然的に「近親交配」が増えます。遺伝子が類似したもの同士の交配は、病気や奇形が遺伝しやすいとされ、結果として死産の多さや寿命の短さにつながってしまいます。

実際、日本の動物園のアムールヒョウにおいても、半数以上が前述した「ベル」の子孫です。コロンもベルの孫。

そこで鍵となるのが、独自の系統を持つ、海外生まれのアムールヒョウたち。

(赤字:コロンに近い家族 青字:海外生まれの個体)

2022年11月時点で、日本にいる外国生まれのアムールヒョウは4頭

そのうちのオスは「アブス」(東武動物公園)と「アニュイ」(王子動物園)。アニュイはコロンのお父さんです。アブスはまだ子孫を残していませんが、高齢のため難しいかもしれません。

日本と海外の血が入っているコロン。近い将来、無理のない形でお母さんになってくれたら嬉しいですね。

コロンの生活@いしかわ動物園

(「スリスリ」「じっ…」の繰り返し。)

コロンは、いしかわ動物園に来てもうすぐ8年になります。

到着時のようすは前述しましたが、今日まではどのように過ごしてきたのでしょうか。

★2015年7月24日 公開初日
・とてもスムーズに屋外展示場へ。
・展示場を歩き回った後は、息を「ハァハァ」ときらし、「クーラーの効いた寝小屋に帰りたい」と催促するかのように扉をたたくことがあった(北陸の暑さはちょっと苦手のよう)。

★2015年8月2日「2015 クールZOO」
・ヒョウたちの暑さ対策:ミストや遮光シートで熱中症対策。常に「ハァハァ」と荒い呼吸をして体温調整をしている。そのため、屋外に放飼する時、冷房のきいた寝室からなかなか出ずに飼育員さんを困らせる。

★いしかわ動物園情報誌『アニマルあいズ』(2015年秋号)
・コロンの性格:甘えん坊でおてんば。好奇心旺盛で食いしん坊。屋外展示場の馴致では、初日から6mの高さまで柵を一気に駆け上った。

★いしかわ動物園情報誌『アニマルあいズ』(2016年夏号)
・コロンの食事について:1日1回、約1kgの馬肉と250gほどの鶏けい頭、鶏のレバーを1~2つを食べる。また、週に1日、健康維持のための絶食日がある。

★2019年4月27日 「ヒョウの散歩道」(いしかわ動物園公式サイト どうぶつえん日記より)
・屋外展示場に、新しく「ヒョウの散歩道」が完成。ガラストンネルの上から続く5mの丸太橋と、柵越しの高さ3.5mに設置した幅60㎝の4つの台(一周目に寝ていた場所ですね)からなる。
・ユキヒョウのスカイは、初日から軽快に散歩道を楽しんでいた一方、コロンは散歩道をじーっと見つめ、なかなか最初の一歩が踏み出せなかった。

(散歩道を初めて見たときはこんな風に見つめていたのかも。)

★2020年のコロン(猫ちゃんみたい!)

★2022年のコロン(ミジンコ寝!)

コロンの「帰宅前大サービス」

ずっと筆者を狙っていたコロン。

ですが時刻は16時を過ぎ、間もなくお互い帰宅時間です。
やっとガラストンネルから降り、寝室へ向かっていきました。

そして…

寝室の前で立ち止まってこちらを見つめてきました。

コロンはとても美人なヒョウですね。このとき初めて、コロンを正面からしっかりと見ることができました。

(横顔も美しいです。)

赤ちゃんの頃と比べてみると…

(赤ちゃんの頃の写真はYouTube「2014.6.11 福山市立動物園 アムールヒョウの赤ちゃん(その1)」より)

コロンがとても大切に育てられ、美しく成長したことがわかりますね。

おまけ:屋内では完全に猫ちゃんでした

屋内展示の日のコロン。
背中の丸みがなんとも猫っぽいですよね。

長~いしっぽをたまにゆらゆらさせながら、くつろぐコロンでした♪

ちなみに、コロンたちヒョウが屋外展示場にいる時に、「あれ、いないな?」と思ったときは、まずガラストンネルの上を探してみてください。高い木の上でも過ごすことのできる、ヒョウならではの行動範囲の広さに驚くはず。普段は見ることのできない、ヒョウの足の裏やお腹を見ることができますよ!

上にいない時は、暑さを避けるためにガラストンネルの下にいるかも。または、高台の上でスヤスヤ…(「二周目」決定の瞬間)。

(コロンは「ネコたちの谷」にいます。)

 

コロンの家族

●コロンのお母さん「ピン」(福山市立動物園)

●コロンのお父さん「アニュイ」(王子動物園)

●コロンの双子「カラン」

東武動物公園を経て…

現在は群馬サファリパークに。

●コロン一家

一つの動物園で一緒に時を過ごした家族が、今では別々の動物園でたくましく生きていて、とても感慨深いです。

コロンのおじいちゃん・おばあちゃんは国内最高齢の持ち主

●コロンのおじいちゃん「ベル」

たくさんの子孫を残してくれたベル。2017年、徳山動物園(山口県周南市)で、19年の生涯を終えました。当時の国内最高齢のアムールヒョウでした。

●コロンのおばあちゃん「チャイム」(安佐動物公園)

チャイムはなんと、2023年5月17日で20歳(人間でいうと100歳以上!)。ベルが亡くなり、国内最高齢となりました。2021年の敬老の日、長寿を祝って表彰状が贈られました。

大きな病気はしたことがなく、県外からファンが訪れるほどの人気者。これからもずっと長生きしてほしいですね。


文章・画像/名月子店(めいげつこてん)

LATEST ARTICLES

安佐動物園のゾウ3頭は全員貴重!アフリカゾウのオスの現状と、マルミミゾウの繁殖、かつて日本...

前回の記事では、2属3種のゾウ(亜種含めると6種)の細かな違いについて解説しました。 今回は、その中でアフリカゾウとマルミミゾウを展示している「安佐動物公園」(広島県広島市)のゾウを紹...

【6種のゾウ】日本では全種に会える!見分け方を写真で解説。【アジアゾウ・アフリカゾウ・マル...

皆さんは「ゾウ」というとどんな姿を思い浮かべますか?大きくて、鼻が長くて、牙が生えていて…。 ゾウは大きく分けると3種類、亜種を含めると6種類もの種が存在するんですよ(絶滅した種を除く...

サンシャイン水族館でアオリイカの公開給餌を激写!模様が波打つイカ「コブシメ」も紹介。

サンシャイン水族館(東京都豊島区)ではさまざまなイベントが開催されますが、筆者は2023年6月、「アオリイカ」の公開給餌を目撃しました。 公開給餌が行われたのは、本館1階の「海...

雨の日のサンシャイン水族館。天空を見上げるペリカンとペンギン

今回は、「サンシャイン水族館」(東京都豊島区)でしか見られない生き物の展示方法を紹介します。 中でも屋外エリアの「マリンガーデン 天空の旅」では、まるで空を飛んでいるようなペンギン、高...

【多摩動物公園】インドサイ「ゴポン」とともにつくったトレーニング。その内容や目的に迫る!

今回は「東京都多摩動物公園」(東京都日野市)で行われているインドサイのトレーニングについて紹介します。 「インドサイ」といえば、硬い皮膚が特徴的で、体全体が鎧で覆われているように見える...

Most Popular

- Advertisment -

MAP

EVENT CALENDAR