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2022年12月誕生!群馬サファリのチーターの赤ちゃん誕生記念ツアーがすごかった。~家族5頭の尊い時間~

2022年12月11日、群馬サファリパーク(群馬県富岡市)でチーターの赤ちゃんが誕生しました。

この記事では、元気いっぱいにすくすく育つ赤ちゃんたちを徹底解説!

クラリスの出産をお祝いする限定ツアーにも参加してきました。すると、チーターの驚きの生態が明らかに…!?

群馬サファリのクラリス一家を紹介

母:クラリス

今回お母さんチーターになった「クラリス」は、2017年2月5日、多摩動物公園で生まれました。2018年10月から群馬サファリパークで暮らしています。

父:キト

お父さんになった「キト」は2015年8月6日、富士サファリパークで生まれました。2020年には多摩動物公園に来園し、2021年6月から、群馬サファリパークで暮らしています。

2頭の繁殖成功にかかった時間は…

クラリスとキトの2頭は、「ブリーディングローン」(繁殖を目的とした動物の貸借契約のこと)によって群馬サファリパークにやってきました。

2021年にキトが来園し、2頭の繁殖計画がスタート。
物おじしない性格のキト×臆病で神経質なクラリス…ペアリングの進展には少し時間がかかったようです。

その期間、約1年以上。
2頭の繫殖活動は、他園からの仲間も増えたことが刺激となったのか、2022年の夏以降から進展していきました。チーターは、飼育下での繁殖が難しい動物。単独で行動するため発情が起こりにくく、妊娠後期から末期まで、お腹の⼤きさや⾏動などの外⾒的変化から妊娠を判断するのが難しいからです。そのためクラリスの妊娠も、出産直前までわからなかったのではないでしょうか。

ちなみに、チーターはクラリスのように臆病な性格の個体が多く、争いを嫌います。例えばライオンなどの多くの肉食動物は夜行性ですが、チーターは昼行性。彼らの外見的特徴である、顔の黒い筋模様(ティアーライン)は、日光のまぶしさを軽減する役割があると考えられています。

また、野生のチーターは死肉を食べません。それはライオンやハイエナなどの群れで行動する肉食動物との奪い合いを避けるためだと言われています。狩りに成功して獲物を食べていても、敵が狙っていると気づけばすぐに、獲物を残して立ち去ります。

ついに誕生!赤ちゃんの性別や名前は?

そして、2022年12月11日、ついにクラリスとキトの赤ちゃんが誕生!
オス1頭、メス3頭の計4頭です。

今回のチーター誕生は、世間的にもとても話題になりました。
その理由として、

・群馬サファリパークではおよそ7年ぶりのチーター誕生だったこと
・母クラリスが初産だったこと
・チーターは絶滅の恐れがあること

が挙げられます。

今回が初めての出産だったクラリスですが、出産直後から現在まで、とても上手に子育てをしています。クラリスは出産当時、5歳。チーターの年齢では立派な大人(2歳前後で大人になります)ですが、私たち人からすると5歳で4頭もの赤ちゃんを生んで、周りの力を必要とせず一頭で子育てができるなんて本当にすごいですよね。

とはいえ、クラリスは神経質な性格。加えて出産後は母性が強くなるため、落ち着いて子育てできるように飼育員さんたちは細心の注意を払っていたそうです。

2023年3月14日には、4頭の赤ちゃんの名前が決定しました。

オスは「トア」メスは「メルレ」「リース」「クララ」です。

2023年3月18日、一般公開が始まりました。

500グラムほどで生まれた赤ちゃんたちは、この頃には約9キログラムになっていました。わかりやすく言うと、ブロッコリー1個が、4か月で米袋になったようなイメージです(伝わりますか?)。

「クラリス出産おめでとう!公開記念ガイドツアー」に参加してきた

群馬サファリパークでは、クラリスの出産を記念して、2023年4月1日~4月23日まで「クラリス出産おめでとう!公開記念ガイドツアー」が開催されました。

筆者は滑り込みセーフ!の4月22日に参加。群馬サファリでしか体験できない内容が盛りだくさんでしたよ。

まずは通常の園内バスと同様、サファリバスに乗車して園内へ。

(公式ホームページより)

チーターたちに会えるのは、「ウォーキングエリア」。バスを下車するエリアで、ほかにもたくさんの動物が生活しています。このツアーではフラミンゴやヤギたちに挨拶(?)をしながらまっすぐ「チーター展示獣舎」へ。

クラリスたちの秘蔵映像や秘話ガイド

筆者はこの日、初めてチーターという動物に会いました。感動もひとしお。そうしているとチーター担当の飼育員さんが、クラリスの出産から今日までのようすを記録した映像を見せてくれて、出産秘話を話してくれました。
中でも面白かった話は、

「赤ちゃんはいつもお母さんの上に乗って寝ていた。でも重くなってくると、だんだんクラリスがしんどそうにしていた。」

というもの(笑)4頭の成長がとても早いことがわかるエピソードでした。

その後は赤ちゃんたちにごはんをあげながら、それぞれの紹介をしてくれました。チーターは生後1~2か月くらいで、お母さんが食べているお肉を、少しずつ分けてもらいながらお肉の味を覚えていきます。群馬サファリの赤ちゃんたちはまさにお肉の味を覚えたばかりで、食べ盛りの時期!
ただ、生まれて半年くらいはお母さんのお乳も飲む赤ちゃんもいます。

赤ちゃんチーター4頭を紹介。見分け方は?

赤ちゃんチーター4頭の見分け方は、顔としっぽです。

2頭はしっぽの先が白く、もう2頭は黒いです。性格もそれぞれ違うので、一瞬で見分けられるファンもいるとか。

しっぽの先が白い組①トア

(4頭の中で一番大きく、9.2kgあるそう。)

まずは唯一の男の子、「トア」
お父さんのキトによく似て、顔がキリっとしています。また、右目の下の黒い模様も特徴です。
性格は元気いっぱいで少しドジ。岩の上に登るのが好きですが、何度も落っこちていたのだとか。

トアは木をガジガジ…。歯がむず痒いのでしょうか。

ちなみにチーターの赤ちゃんには生まれたときから小さい歯が生えていて、前歯が12本、鋭い犬歯が4本、奥歯が16本の計30本あります。

しっぽの先が白い組②リース

女の子の中で一番大きい「リース」
女の子ですが、かっこいい雰囲気。目の下の模様(ティアーズライン)が細く、目の上のM字が左右対称なのが特徴です。

性格はお母さんのクラリスに似て慎重で臆病。何かあると一目散に逃げてしまうそう。

しっぽの先が黒い組①メルレ

「メルレ」は、大人っぽい顔つき。少しトアと似ていますが、メルレは右目の上の黒い模様が少し濃いです。

(メルレとリース)

性格もトアと似ていて、元気いっぱいでやんちゃ。

しっぽの先が黒い組②クララ

「クララ」は4頭の中で一番身体が小さく、丸々とした顔つきです。少し垂れ目のベビーフェイス!
クララは生まれてからしばらく、体調を崩していました。その時期は飼育員さんもかなり神経をすり減らしながら治療に当たったそうです。

(クララはよく舌をしまい忘れる…?)

今ではすっかり活発なクララ。マイペースな性格で、誰かにくっついたり、離れたり、一人でいたり…。

飼育員さんのエサやりを観察したあとは、ウォーキングエリアを30分ほど自由見学。筆者はほかの動物たちに「2周目に会いに行くからね!」と告げて、ずっとチーターのところにいました。

サファリバスに戻ったあとは、残りのサファリゾーンを周回して終了。チーター以外の動物もしっかりと見学できる、充実したツアーでした。

終了時にはバスガイドさんから、「チーターオリジナル缶バッジ」をプレゼントしてもらいました!

こんな発見が。

クラリス一家5頭を観察していて、こんなことに気づきました。

1.一頭が動くとみんなが動く!

急にすごい速さで走り出したメルレ。トアとリースは、すぐに反応して…

どこまでも追いかけます(笑)生まれて4か月ちょっとですが、俊敏さは大人顔負け。
チーターは生後1~2か月で速く走れるようになるんですよ。成獣になると動物界一の俊足となるチーターは、最高で秒速29m(およそ時速105km)を超えるとも言われています。
こうして遊びながら、フォームを磨いているのかもしれませんね。

2.お母さんのことをいつでも見ている!

身体を木にこすってにおい付けしていたクラリス。
赤ちゃんたちはすかさずお母さんのもとへ走っていき…

お母さんのおしりを確保(?)!

また、クラリスの下をくぐったり、ピタッとくっついて移動する姿も。
チーターは生まれてから5~6週間で、お母さんのあとをついて歩きます。野生のチーターは敵であるライオンやチーターなどを避けるため、頻繁にすみかを変えながら移動します。その際に、敵に気づかれないように固まって行動するのです。

3.オスとメスで行動に違いがある!

首を噛まれても全く動じないクラリス。初産ですが、ベテランお母さんの風格がありますね。
チーターは速く走ることに特化した動物。アンバランスなまでに顔が小さく進化したことで、噛む力はあまり強くありません。こうして敵の急所にガッチリと嚙みつくことで獲物をしとめます。お母さんが練習台になって、子どもたちに教えてあげているんですね。

狩りの練習を熱心に行っているのはほとんど、メスであるリースやメルレ(たまにクララ)。
オスのトアはどちらかというと、よく遊んだり食べたりしています。

こんなイメージでしょうか。オス・メスで行動に違いが見られました。メスは子育てをし、子どもの分まで狩りをします。そのためオスより狩りが得意で、単独生活を送る一方、オスは狩りが苦手で、群れ生活を送る傾向にあると考えられています。幼いころからの行動が、その理由の一つかもしれません。

チーターの子どもたちは、1歳半くらいで親離れします。5頭で過ごすことができるのはあと1年くらいだと思います。5頭を観察していると、家族ですごすこの時間のすべてが、これから4頭が自分で生きていくための糧になっているように感じました。

チーターの赤ちゃんの生態

チーターの赤ちゃんならではの特徴は、「たてがみ」
大人にはない、ふわふわとしたたてがみが首の後ろに生えています。

このたてがみは、草などに紛れて、ライオンなどの捕食者の目をあざむくために発達したと考えられています。生後半年~1年ほどでなくなり、大人の毛になっていきます。

(左:リース、中央:メルレ、右:クララ。仲良し3姉妹!)

ほかにも、

・生まれたときから耳が聞こえている!
・目が開くのは生まれてから10日後くらい!
・赤ちゃんの鳴き声は「ピーピー」という小鳥のような声!→飼育員さんがごはんをあげているときに発していた鳴き声ですね。

といった生態があります。

ちなみにチーターは大人になっても「ニャオニャオ」という可愛い声で鳴きます。チーターはライオンやヒョウ、トラのような「ガオー!」と鳴く動物(「ネコ科 ヒョウ属」)とは分類が異なるためです(「ネコ科 チーター属」)。チーターは「ヒョウ属」とは異なり、舌の骨が柔らかく、「ガオー!」という鳴き声を発することができません。また、チーターは縄張り意識が強くないため、敵に自らの存在を主張するような鳴き声を発する必要もないというわけです。

チーターの数は激減している

現在、チーターの数は激減しています。

世界に生息するチーターは約7100頭。生息地はかつてアフリカ全域から西南アジアに広がっていましたが、このうち91%がすでに失われた、という報告があります。

また、チーターの「遺伝的多様性」は乏しく、約99%のチーターが同じ遺伝子を共有しているといわれています。それは数が減った結果、近親交配を繰り返さざるを得ないためです。赤ちゃんの生存率も低く、野生では生後3ヶ月までに約90%が死んでしまいます。

(レッドリストでは「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」=絶滅の危険が増大している種に分類。)

私たちはチーターのことを少しでも理解して、チーターの絶滅を防いでいく必要があります。

そんな中で生まれた4頭。
幼い4頭の成長を見守ることで、チーターのことを多く知るきっかけになると思います。

皆さんも群馬サファリパークのクラリス一家に会いに行ってみてはいかがでしょうか。
今しか見ることができない瞬間が、たくさんありますよ。

文章・画像/名月子店(めいげつこてん)

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