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コロナ後の動物園が担う役割2『教育』

教育とは知識の拡散を示します。前回お話しした通り、動物園が取り扱う野生動物の大半は絶滅の危機や生存への脅威に囲まれています。その脅威の多くは、人間により社会活動の結果としてもたらされるものです。しかしその社会活動の要因は先進国に起因することが少なくないのです。そういった現実を私たちが日常の生活で意識することはほとんどありません。
 

カワウソブームが生み出す新たな危機

カワウソ
カワウソ ※イメージ画像

近年の例として、カワウソのペットブームをあげましょう。タイの市場ではカワウソは40,000円ほどで取引されますが、日本のペットショップでの販売価格はゆうに1,000,000円を超えてきます。輸送費など諸経費を200,000円と仮定しても単純計算して800,000円の粗利を見込めるわけですから、ビジネス上これほど割のいいビジネスはありません。

これが1頭あたりの計算なので、頭数が増えれば増えるほど割のいいビジネスです。現地の人にとっても1頭40,000円はとても大きな収入です。約200,000円もあれば現地でかなり安定した生活を送ることが出来るので単純計算でも、5頭販売できれば月の生活費は安定します。

ただ現地の人がカワウソをペットにすることはほとんどありません。つまり先進国での需要に対し、生息地域での乱獲と商機が生み出されているのです。現地人にとってもカワウソを扱う業者にとっても、これほどの粗利益が見込まれればどれだけ規制されても、リスクを冒してでも手をだす価値のあるビジネスとして認識されてしまいます。むしろ規制は希少価値を高めさらなる価格上昇と闇取引の温床ともなりかねないのです。
 

教育という抑止力

こういった現実を発信すること、需要をつくりださないための知識と現実の普及こそが今日の動物園が担う教育として使命なのです。

コツメカワウソのペットブームが始まるまえには、メディアで流しカワウソなるものをよくメディアで目にしました。動物園が経営・運営に苦しむ中で、集客するために考え出した苦肉の策だったのかもしれません。しかし目先の集客に特化した発信は、このように予期せぬ効果をもたらす可能性があることを意識しなくてはなりません。

ここでの教育とはただ教養を高めるというものではありません。教養を訴えかけることで、抑止するという実績が求められるのです。しかし直接的な効果を実感することはできません。なぜなら最終的な実績は、来園者の倫理的・道徳的な判断と決断にゆだねなければならないからです。なぜ密輸がダメなのか、なぜ囚われの生活にすべきでないのか、それまでの苦痛・苦悩を発信する。決して綺麗な面・可愛い側面だけではなく、悲壮で残酷な側面もまた発信できる場であってこそ教育の場なのです。

SNSの発展で、世界は映えるもの・可愛いもの・人の関心を得るための情報であふれかえっています。それらのいい面とは異なる情報は、それ相応の責任と道義的な意義をもっていなければなかなか発信することが難しいのです。目を背けたいモノは当然ですが避けられがちになるからです。園として教育性を強調することで負の情報をポジティブな結果に結びつけるために発信することができる。そういうポテンシャルを秘めているのが動物園・水族館という施設の未来です。
 

動物園・水族館が好きな皆さんに調べてみてほしいこと

日本の動物園は、そういった役割を果たしている施設はまだ多くありません。動物日和をご覧になっている読者の皆様にはぜひ、動物園・水族館で皆さんを魅了している動物たちの見えない裏側にある悲しいストーリーに一度目を向けていただけると幸いです。それらのストーリーのどこかに私たち日本人はいないのか今一度振り返ってみてください。誰かを「悪」としてつるし上げたいのではなく、規制をかけなくてもそういった需要に目がいかない社会を目指すために小さな声を少しずつ大きくするきっかけにしてほしいのです。
 


文章/T.A.L.L

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