コロナ禍で外出を控えざるを得ない世界になって3年が経過しようとしています。コロナへの心配をしつつ、外出が出来る社会で動物園や水族館はどういう施設になりうるのか。今回のコロナによって外出することの概念が変化した今日、動物園や水族館もこの変化をチャンスととらえ、新たなフェーズへと足を踏み出すことが必要なのではないでしょうか。今後の世界を生き抜き、100年先も存続する動物園を考えるための道筋を考えていきます。
動物園の100年先の未来のために
動物園とはあなたにとってどういう施設ですか?「子供のころに通った思い出の場所」「好きな動物を観られる場所」「子供を連れていく手ごろな場所」…動物園に行く理由は様々だと思います。しかし「動物園であなたはなにを学びましたか?」と聞かれたらあなたはなんと答えるでしょうか?
世界的に動物園が求められている役割はより倫理的・道徳的になり、逆に娯楽的に動物を扱う施設への風当たりは強いものになっている傾向にあります。例えば、シーワールドのシャチやイルカのショー廃止の流れです。動物園が日本でも存続していくために、動物園が存在する道義的な意味をしっかりと主張することが先100年を占うと言っても過言ではありません。
動物園の社会的役割
道義的・倫理的な存在価値とはいかなるものでしょうか。そのまえに動物園の5つの役割を考えてみます。ざっくり言うと『娯楽』『研究』『繁殖』『保全』『教育』の5つです。多くの来園される方は、『娯楽』や『繁殖』という役割に期待を込めて動物園に訪れます。特に『繁殖』という役割から生まれてくる赤ちゃん動物は恰好の集客コンテンツとなります。しかし動物園が本質的に担いたい役割の比重は、むしろ来園理由になりうることが稀な部類なのです。これらの役割を、大きく分けて下記の3種類に分類してみましょう。
来園理由となる役割 | 動物園が発信したい役割 | 実績が求められる役割 |
娯楽・繁殖 | 研究・保全・教育 | 研究・保全・教育・繁殖 |
動物園が好きな方や関心を持っていただいている方々は恐らくこれらの役割を把握してくださっている方々もいらっしゃるでしょう。しかしこれらの役割を知らないまま、娯楽的な側面を目的として来園される方の方が大半を占めます。動物園の倫理的・道義的な価値を高めることは、来園理由となる役割を果たしつつ、動物園が発信すべき情報をしっかりと知識として発信し、実績を残すという役割を果たすことなのです。
先進国だからこそ行動すべきこと
動物園が扱う動物の大半は、世界で絶滅の危機に瀕し人の手によって常に命の危機に直面しています。その現実は、生息地の国々の人々よりもむしろ彼らから遠く離れた先進国の人々が認知し行動を起こすべき問題なのです。どう行動するべきなのかを発信する手段こそが動物園なのです。
次回記事から動物園の役割ごとにお話ししていきます。
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文章/T.A.L.L